第三十三回(2021/03) コンパクトシティは2種類ある

 先日、大和大学の最終ゼミでコンパクトシティ(集約型都市構造)を取り上げた。事前に各自が文献やネットで調べて、特徴のある事例をプレゼンしあう。写真を掲げたブラジルのクリチバ(Curitiba)市のほか、日本の例では串ダンゴ型の富山市、一極集中型の青森市などが報告された。ちなみにわたしは、宇都宮市のネットワーク型コンパクトシティ(NCC)を紹介した。その授業のなかで新しいことに気付いた。

 これまで一括りにされてきたコンパクトシティには、実は目的を異にする2つの種類があるのではないか。異なる目的とはこうだ。ひとつは人口が増大する都市の成長を管理するためであり、他のひとつは人口が減少する都市の存続可能性を追求するものである。スプロールの制御と、スプロールを既定の環境とする計画ともいえる。つまりコンパクトシティは本来型と新型の2系列なのだろう。以下、順に説明しよう。

 まず、ひとつめは人口増大の抑制策だ。これは本格型としてのコンパクトシティの構図である。ローマクラブの『成長の限界』(1972年)などをきっかけに、20世紀後半から欧米などで進められて来た。旧来の城郭都市を維持するため、人口の急増による郊外へのスプロールを防止する政策であった。したがって計画の実施後も当該市の人口は増加して来た。いわば都市における成長管理の一環である。

 もうひとつは人口減少への対策だ。21世紀の日本における新型のコンパクトシティ計画である。人口予測を反映して、判で押したように「人口減少に対応」している。都市のスプロールはすでに与件になっており、中心市街地の再活性化策などによって、内部を拠点化して交通ネットワークで結ぶという。この場合には当然ながら人口増加ではなく、むしろ都市の存続可能性が課題になる。

 この2種類では、都市政策のシーンが変わっている。前者の本来型20世紀モデルは、膨らむ市域をコンパクトにまとめるための政策である。そこでは外縁の膨張を防ぐことが主な目的だった。これに対して後者の新型21世紀モデルは、すでに拡散してしまった都市の空洞化を、人間が制御できるコンパクトなものに再編しようとする政策だ。いわば内包における充実が目的になるだろう。現状のむつかしさはここにある。