第三十一回(2021/01) なんでやねん都構想(その1)

 市の廃止を市長が提案し、それを市民が二度も否決した。壮絶きわまる法定イベントが大阪で行われた。都構想の是非を問う住民投票である。この仕組みは提案者にとって「勝つまでジャンケン」が可能だが、その「三度目はない」と大阪府知事の吉村洋文は明言した。しかし、直後に本人が「暗闇の中で大阪の成長のためにワン大阪を実現したい」と訴えるなど、府市統合の動きが完全に終息したわけでもなさそうだ。

 否決の直後こそ、維新は結果を重く受け止めるとした。しかし数日も経たずに、新条例によって市の権限・財源を府に移すと言い始めた。「大阪市権限縮小条例」(広域行政一元化条例)である。今年2月の府市両議会に提案する予定だ。新条例案に「副首都推進本部」を明記し、成長戦略など広域事業の意思決定を一元化するという。大規模開発と観光振興は府が単独で担う。

 しかも過去に公明が提唱し、一度は立ち消えた「総合区」を再び持ち出した。現在の24行政区を、区長権限を拡大した8総合区に再編するという。究極の民主主義と持ち上げてきた住民投票にも、結果が意に沿わなければ従わない。とにもかくにも二重行政のせいにして、強引に機構を改編しようとする。裏口入学のように姑息なからめ手で、市の存続を望む民意、いわば天の声を踏みにじるようだ。

 他方で自民の大阪府連は、根拠法である大都市地域特別区設置法の効力を一時停止させる立法を狙う。新法案を今年の通常国会に提出したい意向だ。都構想では「1回きり」との合意を破られ、多くの公金や府市職員の労力が費やされた。

 府連は投票以降、同法の問題点を話し合う勉強会を重ねた。同じテーマで何度も住民投票を繰り返せる「勝つまでジャンケン」の状態をなくしたいからだ。この新法案が可決されれば、維新などが新法の効力をさらに打ち消す別の新々法案を制定しない限り、大都市法による特別区の設置はできなくなる。

 各党の動きを傍目に見ながら、関西在住の知人が悔しそうにつぶやいた。「なんでやねん、大阪都構想」。