第六回(2018/12) G20・万博・IR ―誘致の三題噺―

 三題噺という関西発祥の話芸がある。お客の出した3つの題目を織り込んで、即座に一席の噺にまとめあげて演じるものだ。人情噺の名作「芝浜」や「鰍沢」(かじかざわ)などの演目は、ここから練り上げられて行った。破天荒な落語家だった初代の三笑亭可楽が始めたとも言われ、幕末には盛んに行われた。
 その関西の地でいま、新たな活性化策の三題噺がもちあがっている。来年2019年6月の主要国・地域首脳会合(G20サミット)、2025年後半の国際博覧会(万博)、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致である。今回はこれらの戦略を考えたい。周知のように、G20と万博はすでに大阪での開催が決まっている。
 決め手のひとつは、強化された府市の協調・連携であろう。さらには個性的な前市長の退場も影響大なはずだ。それに関西財界が相乗りした形である。現にG20で府市連合は、候補地の愛知県と福岡市を一蹴した。引き続く万博では、改憲用の補完勢力として日本維新の会を必要とする現政権を巻き込み、オールジャパンとして36億円もの誘致費用を集めて指名を獲得した。
 費用負担や防災など万博には課題が山積するものの、これでバブル期の負の遺産である人工島・夢洲をなんとかリサイクルできそうだ。残るのはIRである。万博の跡地利用として不可欠かもしれないが、他方で、カジノは人の不幸で銭儲けをするものという批判がある。そして府市が協調・連携を維持できれば、あの都構想は不要にも見える。ちなみに、東京オリ・パラの決定時に都民の多くが冷めていたように、万博に浮かれる府市民はごく少数のようだ。