第十一回(2019/05)大阪都構想とフシアワセ

 「大阪都構想」という政策がある。地域政党である大阪維新の会の党是だ。東京のような都区制度を大阪にも敷いて、それによって低迷する関西圏を活性化し、やがては日本の「副首都」に仕立て上げるという意向である。構想をめぐって2015年5月17日に、大阪市民による法定の特別区設置住民投票が行われた(投票率66.83%)。

 絶対集計の結果では、賛成が全体の33.02%、反対33.53%、棄権・無効33.44%であった。賛否が拮抗したコンマ以下の僅差であり、案は綱渡りで否決された。だが、今回の知事と市長のダブル・クロス選挙で維新両候補が圧勝し、府・市議会議員選挙でも健闘した。結果を受けて公明が再び容認に転じたため、住民投票がゾンビのように(?)復活とも言われる。ただし行政手腕への評価と、都構想への評価は別だとする関西人のさめた判断も漏れ聞く。

 ところで、案のもとになった着想の一つには、「フシアワセ」というフレーズがあるかもしれない。府と市が合わさるから不幸せだとする関西で慣用される冗句だ。つまり大阪府と大阪市による大都市での二重行政こそが、府民・市民を幸福から遠ざけ続けているとの根強い被害意識である。

 構想の核心は、端的に現行の大阪市を廃止することだ。そして広域行政機能を府に統合して集権化し、市内の24行政区を4特別区に集約してコミュニティ機能を分権化する。これで十全な都市自治が可能か、半自治体である東京23区民の経験からは疑問なしとしない。まして多くの市が昇格を切望する政令指定都市の特例を自ら手放すのはいかがか。都構想で関西は再生するだろうか。それこそがフシアワセなのでは。

(図は大阪市特別区素案、『今さら聞けない「大阪都構想」』などより引用)