第十二回(2019/06)伝・仁徳天皇陵―大阪初の世界遺産

 「百舌鳥・古市(もず・ふるいち)古墳群」のうち49基が、近く世界文化遺産に登録される。大阪府の悲願ともいえる初の世界遺産である。古代の有力者のお墓であり、堺の「百舌鳥」と羽曳野・藤井寺の「古市」には最盛期の古墳が集中する。半島の百済と結び高句麗に抗するヤマト政権が築いた、全国的な版図ネットワークの中心地でもある。

 古墳は円墳・方墳・前方後方墳・前方後円墳の4種類だ。後の二者が巨大古墳とされる。登録審査のポイントは「顕著な普遍的価値の証明」であった。百舌鳥・古市では、多様な古墳の集積に加えて、前方後円墳の世界的にも特殊で美しい形状が理由になったようだ。ちなみに堺の仁徳陵を、毎日2000人の作業員が人力で造営すると何年かかるか。大手ゼネコンが15年8カ月と試算した。巨大な土木事業であり、並の権力ではない。

 仁徳陵は、クフ王ピラミッド、始皇帝陵とならぶ世界3大墳墓だが、なかでも1番大きい。5世紀中ごろの築造で、全長486m、後円の直径249mの前方後円墳だ。墳丘は3段に築成され、3重の濠がめぐり10基以上の陪冢(ばいちょう)がある。仁徳陵とされてきたが、今はアタマに「伝」が付き大仙陵とも言われる。堺市のHPによると、仁徳天皇の墓かどうか確定できないためだ。

 この陵には意外な面もある。札幌時計台、高知はりまや橋とともに「日本3大がっかり名所」らしい。古墳内部には立ち入れず、石室は奥深く隠れる。遠見では、シイやカシなど潜在植栽が茂るだけの森だ。当初は盛り土の上に石を敷く建造物で、埴輪が並び草木はなかった。本来の姿に戻すべく墳丘の木を伐採する動きがある。それを自然破壊だと反対する声もある。さらに登録を機に、気球を飛ばし展望タワーを建設する案も出ている。