第十八回(2019/12)続・「関」ってなに?——関西・近畿そして関東——

 前回の見聞録では、逢坂の関所を境にして西側が関西、東側が関東に分かれる。その関西は三重を含まない2府4県で、三重を含む2府5県になると近畿だと記した。異説もある。たとえば、関西と福井をカバーする近畿商工会議所連合会は、半世紀も使った名称を「関西商工会議所連合会」に変えた。

 国政選挙の「近畿ブロック」、高校野球の「近畿地区」、気象庁の「近畿地方」は、いずれも関西2府4県をさす。近畿圏整備法(1963年) の「近畿圏」は、前記の商議所と同じ地域だ。だが関西地域振興財団では、これに鳥取・徳島を加えた2府8県を「関西」と呼ぶ。ただし三重は、中部圏開発整備法(1966年)では「中部圏」とされ、天気予報では「東海」だ。

 あのNHKが1996年に、16歳以上を対象にアンケートを行った。「近畿と関西、どちらをよく使うか」との問いに、8割強が関西と回答した。以後は同局の番組タイトルを、「おはよう関西」などと関西に統一したようだ。

 近畿と音が似たkinkyという英単語がある。スラングとしては、風変わり・変態・性的倒錯などを意味する。オンラインの英英辞書は、“unconventional sexual preferences or behavior, as fetishism, sadomasochism, or the like.”(フェティシズムやサドマゾヒズムのように型破りな性的嗜好や行動)とする。

 問題は、日本人がKINKIと発音した場合、外国人にはこのアブナイkinkyと聞こえやすいことだ。これでは近畿が、英語の文脈ではヘンタイ・エリアになりかねない。そのため対外的にKINKIを避ける傾向が強くなってきた。関経連は支分部局(出先機関)の名称を、関西に統一するよう国に求めている。

 現に近畿経済産業局と近畿運輸局は、英語表記をKansaiに変更した。また、英文での略称の使用も登場した。近畿日本鉄道がKintetsu Corporationとし、マグロで有名な近畿大学も2016年からKINKI UNIVERSITYをやめた。東京駅の新幹線ホームから見る看板(写真)のように、Kindai Universityに変えている。