第二十三回(2020/5) 緊急事態宣言の根拠法を読む

 宣言の根拠は特別措置法である。2020年3月13日改正、翌14日施行の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(2012年、法律31号)だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を最長で2年以内、同法の追加対象として新型インフルエンザ等とみなす。政令によって、施行日から翌21年1月31日まで(10か月程度)とされた。

 その目的は感染症への対策を強化し、発生時に国民の生命や健康を保護して、生活や経済への影響を最小に抑えることだ(1条)。ただし2013年4月の施行から先月まで、宣言は適用されてこなかった。「国民の自由と権利に制限」を加える場合も、「対策を実施するため必要最小限のものでなければならない」(5条)とする。

 対象とする疾患は「新型インフルエンザ等」である。「全国的かつ急速なまん延のおそれのあるもの」をさす。国民に重大な影響を及ぼすおそれのある新たな感染症にも対応する(2条1号)。

 そして国や自治体などは、新型インフルエンザ等の発生に備え、行動計画を作成する(6〜9条)。発生が確認された場合、首相は原則として対策本部を設置する(15条)。同本部が設置されたときは、都道府県知事と市町村長もそれぞれ対策本部を設置しなければならない(22条、34条)。先行して医療従事者等へのワクチンの接種が行われる(28条)。

 こうして首相は緊急事態宣言を行う(32条)。これは全国的かつ急速なまん延により、国民の生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合に限る。これによって外出の自粛要請のほか、興行場・催物の制限の要請と指示などの措置が可能だ。都道府県知事も住民に対し外出の自粛を要請できる(45条1項)。

 罰則はないが、多数が利用する施設(学校、社会福祉施設、床面積が合計千平方メートルを超える劇場・映画館・体育館など)の使用制限・停止、催物の開催の制限・停止も要請できる(45条2項)。正当な理由がなく要請に応じないときは、措置を講ずべきことを指示できる。外出自粛や使用制限の期間は、インフル発生後の最初の1-2週間が目安とされる。

 ほかに、住民に対する予防接種の実施(国の負担)。医療提供体制の確保。臨時医療施設を開設するため、土地や建物の強制使用(49条)。緊急物資の運送の要請・指示、売渡しの要請・収用。都道府県知事等も、必要な物資の売り渡しを業者に要請でき、応じない場合は収用も可能(55条)。当該業者には罰則も適用できる(76条)。埋葬・火葬の特例。生活関連物資等の価格の安定。行政上の申請期限の延長。政府関係金融機関による融資などがある。

 また制定時に野党だった自民が要求して、特措法に附帯決議が付けられた。緊急事態宣言を行う場合は「科学的根拠を明確にし、恣意的に行」ってはならないと歯止めをかけたのだ。