第二十五回(2020/7) 不要不急のスーパーシティ法

 コロナ禍のなかで、多くの国民が不安な日々を送る。非常時のどさくさに紛れて、数々の関連予算の不透明な使途のほか、不要不急で的外れな愚策が飛び交う。最たるものは憲法改正による緊急事態条項の追加だが、これは宣言の発令によって必要性が霧消した。そしてマイナンバーに預金口座をヒモ付けすることへの義務づけ案だ。国民を監視するノゾキ趣味か。さらには義務教育を9月入学に変更する案も立ち消えた。すでに先進各国では随時入学が主流になりつつある。

 なかには採決されてしまった法案もある。いわゆるスーパーシティ法だ。国家戦略特区法の改正案が、何と先の5月27日に参議院で可決した。昨年の常会で実質審議が行われず廃案、臨時会には見送られたものだ。個人情報の取得をめぐって内閣法制局との調整が難航したともいう。コロナ禍中の今年2月、再度の閣議決定のうえ国会に再提出された。洗いざらしの法案が拙速に成立したのだ。

 これは、人工知能(AI)やビッグデータなどの最先端技術を組み合わせ、物流・医療・教育等に活用して新都市=スーパーシティをつくる試みだ。クルマの自動運転やキャッシュレス決済、ドローンによる自動配送、遠隔診療などを想定する。高度な医療機関の設置、通院の予約、通院用タクシーの配車予約の連携も可能だ。

 相乗効果による住みやすいまちづくりを、高齢化社会への対応や人手不足の解消につなげる。同法の改正趣旨は「産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため」だという。しかし地域経済が疲弊の極にある今、そんなことをしている場合だろうか。

 国はこの夏にも該当自治体を公募し、年内に全国5カ所ほど特区を選定する予定だ。すでに大阪府市では、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)会場の夢洲において、空飛ぶ自動車などの実証実験を検討しているとか。